学長から新入生へのメッセージ

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新入生および保護者の皆さま

2020年4月13日

学長から新入生へのメッセージ

 2020年度入学式につきましては、新入生にとっての重要性や教育的意義から、日程の変更、内容の縮小・見直しによる実施の方向性を検討してきました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大により、この京都においても緊急事態宣言が政府に要請される事態となり、誠に残念ではありますが式典の中止を決定いたしました。式典は中止となりましたが、教職員一同は新入生の皆さんのご入学を心より祝福し、歓迎いたします。
 この入学式で新入生の皆さんにお話しするはずであった学長の式辞を、新入生へのメッセージとしてここに掲載させていただきます。新入生の皆さんはぜひご一読ください。



式 辞

 新入生の皆さん、あなた方が池坊短期大学で学ぶことを決意し、入学の日を迎えられたことに、心からおめでとうと申し上げます。
 この日を迎えるまでに、豊かな愛情であなた方を育み、励まし、見守ってこられた保護者の方々に、皆さんは心からの感謝の思いを持つとともに、いよいよ自立した大人として社会に出ていくための本格的「学び」の場に入っていく段階を迎えることになります。


 ところが、新しい生活への期待を胸に抱いてこの席に臨むはずであった220名の新入生の皆さん。すでにご承知のように、新型コロナウィールスの世界的感染によって、一同に揃った入学式の形をとることが出来ず、学長として私が皆さん一人一人にお話しすることと致しました。

 世界的規模で拡大したこの病原体感染症によって、様々な行事・イベントや大会・会合、スポーツ競技や文化的取り組みが中止となり、また密閉・密集・密接の状況を避けて、不要不急の外出が取りやめとなりましたし、「緊急事態宣言」にともなって、主要都市間移動も慎むこととなりました。
 こうした事態の中で、大学も多数の学生・教職員の皆さんが一斉に集まることを避けて、授業開始を遅らせることにしましたし、その間大学への許可なき出校を禁止することにもしました。
 大学はこのような事態の中で、学生の皆さんをお守りするとともに、このような逆境においても、皆さんがしっかりと専門力と教養を身に付けていくための手立てをとっていきますので、事態がどう変化しようとも大学からの指導に沿って学習活動に励んでいきましょう。

 現在の世界で起こっていることは大変な事態ではありますが、世界各国の感染者や重傷者の人数の多さから見て、日本ではまだ等比級数的・爆発的拡大にまでは至っていませんし、また政府や都道府県行政の指導に対しても、他国で見られるような反抗的行為をしたり、自分勝手な行動が目立つということもありません。日本人の規律の良さや我慢強さ、皆で協力し合う姿勢、他者と協調・融和することを良しとする文化は、日本の特徴でもあります。

 ご承知のように、558年もの歴史ある「華道家元 池坊」の伝統に基づく華道文化を、教学の基盤に置く「和と美」の建学の精神のもと、日本文化の精神の根幹を理解し、調和的・美的情操を育む「学び」が、本学の特徴です。
 地中海世界から発進したヨーロッパ文明が、自然界を開拓・開発して文明を作り上げていったのとは異なり、日本という国には、自然界の道理と軌を一にした文化を創り上げ、自然と人間の対立概念を持たない共生と融合の生活文化の伝統があります。
 現在、地球上の多くの生命体の有機的連鎖のもとに人類が活かされていることを深く理解し、勝ち負けを争うことや、他者や異文化を排除したり国ごとに競う行動ではなく、風俗・習慣・文化それぞれの「美しさ」の多様性を認め合い、「和」の精神で融合・融和と共生・調和をしていくことの根本精神、いわば「生きることのすべてを想う力」や「想う心」を、建学の精神「和と美」を持つ本学では学ぶことができます。これこそが今世界で進められているSDGs―持続可能な地球を目指す取り組みの精神そのものであるといえます。
 14世紀のヨーロッパで、ペスト大流行により1億人が死亡したり、第一次世界大戦のころのスペイン風邪では世界人口の4分の1が罹患し数千万人が死亡、1957年のアジア風邪や1968年の香港風邪などのインフルエンザ流行などでは日本でも数千人の死者を出しています。こうした疫病の危機を人類は何度も潜り抜けてきました。

 今回の新型コロナウィールスによる感染症の流行も、人類は克服して行かねばなりません。明けない夜はありません。

 大学に来る事ができない期間も、生活にメリハリをつけて、授業に相当する時間帯はしっかりと普段できない学習に取り組み、いたずらにアルバイトを増やすことなく、また身体を動かす努力もしてください。
 本学では、「生きる心」と「生きる力」を集中的に学ぶ2年間を、全教職員が責任をもってサポートし、学生の夢の実現をめざしていきます。
 さらに昨年から、卒業後3年間の進路の悩みをサポートする仕組みも作りました。安心して、大学生活を共にする、留学生の諸君を含めた仲間との学びの素晴らしさや、実習等による社会との連携活動の経験で一段と成長することのできる大学生活を、能動的に過ごすことを楽しみにしてください。
 自らの夢を社会生活の中で現実のものとする力量を、しっかりと修得するであろうあなた方に期待をして、あらためて、「ご入学おめでとう」の祝福の言葉を送ります。

2020413

池坊短期大学 学長 高杉 巴彦